医療機器の薬事戦略を進めるうえで、避けて通れないのが「PMDA相談」です。
特に治験の要否確認やクラスⅣ申請に向けた方向性を固めるうえで、PMDA相談は非常に重要なステップになります。
しかし、初めて相談に臨む企業からは、次のような声をよく聞きます。
- どんな資料を揃えれば良いのか分からない
- どこまで細かく説明すべきなのか不安
- 相談することで、意図しない方向に話が進んでしまわないか心配
- 論点を整理できず「何を聞けば良いのか」迷ってしまう
この記事では、初めてPMDA相談に取り組む企業でも迷わないよう、事前準備の考え方と押さえるべきポイント をわかりやすくまとめます。
PMDA相談が重要な理由
PMDA相談は、単なる“質問の場”ではありません。
申請に必要なデータや治験の方針に大きく影響する、非常に重要な場です。
PMDA相談が果たす役割は次のとおりです。
- 治験の要否を確認できる
- 必要なデータの量と方向性が分かる
- 開発計画の妥当性を確認できる
- 質問票を通じて論点を整理できる
- 申請スケジュールの見通しが立つ
つまり、相談の質がそのまま開発スケジュールに直結します。
初回相談で必ず聞かれるポイント
初回のPMDA相談では、以下の項目が頻繁に確認されます。
- 製品の目的・適応
- 作用機序
- 既存品との違い
- 安全性・有効性の根拠
- 海外データの扱い
- 治験の要否
- 臨床評価の方向性
- リスクマネジメントの状況
これらの情報を整理しておくことで、相談が格段にスムーズになります。
資料作成で押さえるべき5つの項目
PMDA相談の資料は完璧である必要はありません。
しかし、以下の項目を押さえておくと「何を聞きたいか」が明確になりやすくなります。
① 製品概要
最初に説明される資料です。
- どんな問題を解決する機器なのか
- どのように動作するのか
- 適応疾患
- 使用環境
ここは“分かりやすさ”が最重要です。
② 性能・安全性に関する既存データ
性能試験や動物試験、海外の使用実績など、すでに持っている情報をまとめます。
データの穴がどこにあるかを把握するだけでも十分意味があります。
③ リスクマネジメント(ISO 14971)
PMDAは、リスク特定の漏れに敏感です。
- どのリスクを特定したか
- どのようにコントロールするか
を簡潔に示せると、相談の質が上がります。
④ 臨床評価の見通し(治験の要否)
- 治験が必要か
- 海外データを流用できるか
- 日本で治験する場合の規模や範囲
ここを曖昧にしたまま相談すると、方向性がぶれてしまいます。
⑤ 相談したい論点一覧
最も重要な資料です。
聞きたいことを整理し、「優先度」をつけて提示すると、相談の時間を無駄にしません。
PMDA相談前に整理すべき論点
実務で最も重要なのは、「何を確認したいのか」を明確にしておくこと です。
相談前に整理すべき主な論点は次のとおりです。
- 治験の要否
- 評価項目(主要・副次)
- 必要データの範囲と質
- QMSに関する要求
- 使用環境におけるリスク
- 海外データの位置付け
特に「海外データをどこまで使えるか」は、多くの企業が迷うポイントです。
海外企業がつまずきやすい理由
海外企業のPMDA相談支援を行う中で、共通して見られる課題があります。
- 説明の粒度が日本の基準と合わない
- 資料の構成が日本の様式に沿っていない
- 治験の基準が欧米と異なる
- 前提条件の共有が不足したまま相談に入ってしまう
日本のPMDAは「丁寧な説明」と「背景を明示した根拠」を重視するため、海外資料をそのまま流用すると伝わりづらいことがあります。
相談の成功率を高める準備方法
PMDA相談で成功しやすい企業には共通点があります。
- 論点を早期に整理している
- 資料が「過不足なく」まとめられている
- 治験の方向性を事前に考えている
- リスクの洗い出しが丁寧
- PMDAが答えやすい形で質問している
これは、相談を“議論の場”ではなく、方向性を確認する場として活用できている ことが大きな理由です。
実例から見る、よくある“惜しい点”
実務でよく見かけるケースとして、
- 相談時間の多くを「背景説明」で使ってしまう
- PMDAにとっての論点が伝わらない
- 質問の粒度が大きすぎる/細かすぎる
といった“惜しい状態”があります。
最も多いのは、説明したいことが多すぎて論点が埋もれてしまう というパターンです。
論点が明確であるほど、PMDAから得られる回答も質が上がります。
まとめ:相談は準備で9割決まる
PMDA相談は、「何を確認したいか」が明確なほど成功率が高まります。
- 製品概要
- 既存データ
- リスクマネジメント
- 治験の方向性
- 論点の整理
この5つを準備しておくだけで、初めての企業でも相談を効率的に進められます。
不安がある段階でも、相談準備を早めに始めることで、開発全体の見通しが一気に明確になります。
