クラスⅣ医療機器の申請は、医療機器のなかでも最も高いレベルの安全性・有効性が求められる領域です。
その分、必要となる資料や検討すべき項目も多く、初めて挑戦する企業にとっては「どこから着手すべきか分からない」という悩みがよくあります。

この記事では、クラスⅣ申請に向けた ロードマップ作成の基本ステップ を、専門知識がなくても理解しやすい形で整理します。


なぜクラスⅣ申請は難易度が高いと言われるのか

クラスⅣは、生命維持や高度なリスク管理が必要となる医療機器が該当します。

そのため、次のような理由から申請が複雑になりがちです。

  • 治験が必要となるケースが多い
  • 既存データが不足しがち
  • PMDAへの事前相談が複数回必要
  • QMS適合性調査の要求が厳しい
  • 安全性・有効性を示す資料が大量に必要

特に小規模企業や海外企業にとっては、これらを並行して進めるのが大きな負担になります。


クラスⅣで求められる主な要件

申請の難易度を左右するポイントとして、以下の項目が重要になります。

  • 臨床的エビデンス(治験または既存データ)
  • 安全性・有効性を補足する技術資料
  • リスクマネジメント(ISO 14971)
  • 品質管理体制(QMS)
  • 市販後の安全管理体制
  • 使用環境や患者背景の考慮

申請書を書き始める前に、これらの要件が「どこまで揃っているか」を正確に把握することが必要です。


ロードマップ作成の基本ステップ

クラスⅣ申請は闇雲に進めると手戻りが大きくなります。

まず最初に、以下の流れで全体像を把握することが重要です。


① 製品特性の整理

申請に必要な要件は、製品特性によって大きく変わります。

  • どんな適応か
  • どの部位で使用するのか
  • どのような作用機序か
  • 既存品と何が違うのか
  • 使用環境のリスクはどこにあるか

ここを丁寧に整理することで、必要なデータや治験の有無が明確になります。


② 既存データの棚卸し

メーカー側がすでに持っている資料を確認し、次を洗い出します。

  • 安全性データ
  • 性能試験
  • 動物試験
  • 海外の臨床データ
  • 不足している項目

「不足データの明確化」が後工程のスケジュールに大きく影響します。


③ 治験の要否判断

クラスⅣでは治験が必要となるケースが多いため、

治験を実施するのか」「海外データの活用は可能か

を早めに判断することが重要です。

治験を実施する場合は、

  • 対象疾患
  • 主要評価項目
  • 症例数
  • 施設の選定

などがロードマップに直結します。


④ PMDA相談スケジュールの設計

クラスⅣ申請では、複数回のPMDA相談が前提になります。

  • 事前面談
  • 対面助言
  • 追加相談

など、適切なタイミングで実施する必要があります。

相談を進めるうえで、「何を確認したいか」「どこまで資料を揃えるか」を整理すると、相談効率が上がります。


⑤ QMS適合性調査の準備

クラスⅣの場合、QMS適合性調査も重要なステップです。
製造所・設計管理の状況を把握し、不足があれば早めに補強します。

小規模企業では、

  • 手順書が揃っていない
  • 責任者が明確でない
  • 文書管理が曖昧

といった課題が多く見られるため、ロードマップの早い段階で指摘しておくと進めやすくなります。


⑥ 承認申請に必要な書類の見通しをつける

申請書に必要な資料は膨大ですが、

  • 今あるもの
  • これから作るもの

に分けることで、負担が大幅に軽減されます。

特に海外企業は翻訳や説明の粒度の違いで手戻りが起こりやすいため、「日本で必要なレベル」に合わせて調整することが重要です。


海外企業が迷いやすいポイント

海外企業からよく聞かれるのが次の3点です。

  • 海外データをどこまで活用できるのか
  • PMDA相談でどこまで説明すべきか
  • 治験の基準が他国と異なる点

特に「説明の粒度」は日本独自の難しさがあり、必要以上に書きすぎたり、逆に情報が不足したりするケースが多い印象です。


ロードマップ作成で欠かせない3つの視点

  1. 製品特性に基づく“必要なデータ”の明確化
  2. PMDA相談タイミングの最適化
  3. 社内リソースと外部支援のバランス調整

この3つが揃うと進行のブレが減り、申請までのスケジュールが安定します。


よくある失敗例と回避策

  • 治験の要否を曖昧なまま進めてしまう
  • PMDA相談の論点が整理されていない
  • 必要文書が整わず直前で慌てる
  • 海外資料をそのまま流用してしまう

これらはどれも初期に方向性を固めていれば防げます。


まとめ:最初の一歩は“全体像の把握”から

クラスⅣ申請は決して簡単ではありません。

しかし、

  • 製品特性の整理
  • 既存データの棚卸し
  • 治験の要否判断
  • 相談スケジュール設計

という基本ステップを最初に行うだけで、全体の見通しが一気にクリアになります。

小規模ベンチャーでも、正しい順序で整理すれば前に進むことは十分可能です。